読者の義務

本を読む本
本を読む本
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 861
  • 発売日: 1997/10
  • おすすめ度 4.5

本を読む本を読み終わりました。じっくり読んだので4時間ほど。

本のタイトル通り、本を読むための技術、本の読み方についての本です。

読書にはらう努力が大きいほど良い読み手であるとしたうえで、積極的に本に働きかけて「浅い理解から深い理解へ」と、読み手自身を引き上げていく方法が段階的に解説されています。

そんなわけで、教養書というより、技術書(実用書)というイメージです。

著者はまず、読書のレベルを4つに分けています。

:第一レベル 初級読書:読み書きのまったくできない子供が初歩の読み書きの技術を習得するためのもの。問われるのは「その文は何を述べているのか」ということ。
:第二レベル 点検読書:「拾い読み」「下読み」と読んでもさしつかえないが、気ままに読みかじることではない。問われるのは「その本は何について書いたものであるか」「それはどういう種類の本か」ということ
:第三レベル 分析読書:徹底的に読むこと。「何よりもまず理解を深めるためのもの」
:第四レベル シントピカル読書:1つの主題について何冊もの本を相互に関連付けて読むこと。

また、どんな本を読む場合でも、読者がしなければいけない4つの質問をあげています。

:1.全体として何に関する本か:読者はその本の主要テーマを発見し、それを著者がどのようにして小さい基礎的なテーマやトピックに細分し、順序よく発展させているかを見なくてはならない。
:2.何がどのように詳しく述べられているか:著者が伝えようとしている思考、主張、議論の要点を、読者は発見しようと努めなくてはならない。
:3.その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か:はじめの2つの質問に答えてからでないと、読者はこの質問に答えられない。何を言っているのかがまずわからなくては、それが真実かどうか決めることはできない。ある本を理解したときに、著者の精神を知るだけでなく、その本が果たして真実かどうかを判断するのは、まじめな読者の義務である。
:4.それにはどんな意義があるのか:その本が情報を与えてくれたら、その意義を問わなくてはならない。著者はなぜ、そういうことを知ることが大切だと思うのか。それを知ることは、読者にとって重要か。そしてまた、その本が情報を与えるだけでなく、読者を啓発してくれたのなら、その先でどんな示唆がされているかを問いかけて、さらに啓発されるよう努める必要がある。

これらの質問へは、「読んでいる間に質問し、読書を続けている間に自分自身で回答するよう努力すること」が重要であり、この4つの質問に答えることが読者の義務であるとも述べています。

本文中にも幾度となく「義務」という単語が出てきますが、このあたりは著者の読書に対する哲学的な思想を感じられます。

読書をする際、本に書き込みをする人は多いと思いますが、著者も書き込みを推奨しています。そして、効果的な書き込みの方法の例として、以下の7つをあげています。

+傍線を引く。重要な箇所や、著者が強調している箇所に線を引く。
+行のアタマの余白に横線を入れる。すでに傍線をほどこした箇所を強調するため、または、下線を引くには長すぎるとき。
+☆印、※印、その他の印を余白につける。これは濫用してはならない。その本の中でいくつかの重要な記述を目立たせるために使う。
+余白に数字を記入する。議論の展開につれて要点のうつり変わりを示すため。
+余白に他のページのナンバーを記入する。同じ本の他の個所で著者が同じことを言っているとか、これと関連したり矛盾したことを言っているということを示すため、各所に散在する同じ種類の発想をまとめるためである。――を比較せよ、という意味でcf.を使う人も多い。
+キーワードを○でかこむ。これは下線を引くのとだいたい同じ効果をもつ。
+ページの余白に書き入れをする。ある箇所を読んでいて思いついた質問や答えを記録するため、また複雑な議論を簡単な文にまとめるため、主要な論点の流れを追うために、これをする。裏表紙の見返しを使って、出てくる順番に要点をメモし、自分専用の索引を作ることもできる。

本書の中では読書の各レベルについて更に詳細に規則や手順が述べられていますが、すべての本をここで述べられている分析読書で読んでいたのではとてもではないですが時間がかかりすぎます。この点についても著者は、分析読書は「時間的制約がない場合場合のもっともすぐれた完璧な読みかた」と言っています。反対に、点検読書は「時間に制約のある場合のもっともすぐれた完璧な読み方」、シントピカル読書は「もっとも報われるところの多い読書活動であり、苦労して学ぶだけの価値のある、きわめて有益な読書技術」とも言っています。

1978年に書かれた本ですが、内容的にもまだまだ十分通用すると感じます。これから読書量が増えるであろう学生さんにこそ読んでほしいと思える本でした。私自身、もっと早くにこの本を読んでいれば……と思いました。

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